デブの視界

巨女のうち一人の供述

虐待の結果としての肥満

私はほんの最近まで、自分が太っている理由は運動不足と体質のせいだと思っていた。

母は親なのだから普通の生活をしていて太るようなメニューは出さないだろうと信頼していたのだ。
現に、カレーライスを二杯三杯とお代わりをしないと「今日は元気がないね、何かあったの」と言われるので、カレー皿に山盛りのカレーを一食につき二杯三杯食べるのが普通だと思っていた。
更に毎日のように父に炭酸飲料や大量のお菓子を購入され、私は何の疑問も持たずに与えられるまま貪っていた。

それだけ毎日非常識な量を食わせた上で、母や父はこう言うのだ。

「運動しないから痩せないんだよ」

そう言って母は少ししか食べないし、父は醜く膨れ上がった腹を抱えて、減肥茶やスリムドカンなど更に何か足すことで痩せようとするが失敗するのだ。

本当に運動だけで痩せようとしたら一体一日何km走りこまねばならないのだろう。
一日の半分以上を睡眠と座学で過ごす学生には無理な話である。

私は親の言う通りどんなに運動しても無慈悲に増え続ける体重に絶望し、膨れた体を抱えて数々の暴言と暴力に晒されながら暗黒の青春時代を過ごすことになる。

幾ら何でもカロリーくらい自力で調べれば、あるいはもっと早くに自尊心破壊のループを抜け出せたかもしれない。
しかし、親の言うようにしても一向に痩せないことに絶望した私は、ダイエットに関する情報を忌避するようになってしまった。

「この本に書いてある方法で痩せられる人は普通の人だけで、私のような豚には無理なんだ」

今私は親元を離れ、消費カロリーと摂取カロリーを毎日計算し、三ヶ月ほどで7kgのダイエットに成功している。
特別な運動はせずとも、体重は落ちることをもっと早く知りたかった。

子どもの肥満は親による人生破壊級の虐待である。