デブの視界

巨女のうち一人の供述

デブの仕事

デブは仕事が出来ないと思われる。
自己管理がまるでなってない結果デブになっているからだ。

私は幸い職能には不自由していないので、スキルが積み上がっていくごとに苦労をすることは少なくなってきた。

しかし、デブであるがために、いらぬ苦労を背負うことは多い。

「視界に入ってくるなよ暑苦しい」
「デブだからのろまなんだよ」
「はやく辞めてくれないかな」

何も言われていなくても、そう思われているのではないかという恐怖感がどうしても拭いきれない。
どんなに褒められても、活躍しても、埋めようのない劣等感が常に存在している。

どんなに相手が好意的に接してくれても、いつも居心地の悪さを感じている。
優しい言葉は容易く鉛玉になる。

やがて私は嫌われているという確信に至り、仕事すらろくに手につかなくなってしまう。

結果、私は同じ職場に長く居続けることができない。

デブであるデメリットを帳消しにするため、なんでもかんでも貪欲にスキルを身につけて、気付けば私はただの器用貧乏になっていた。

たまに同世代と話をすると、悔しくて泣きそうになる。
何故そんなに不安を持たずに生きてられるのか。
何故そんなに勉強せずにいられるのか。

私が勉強している時間、彼女らは楽しい時間を過ごし、何の気負いもなくお洒落を楽しんでいるのだろう。

妬ましくてしょうがない。苦しい、つらい。

私をこの世界に産み落とした存在が憎い。

何度も何度も生まれたくなかったと自分も他人も呪いながら生きている。
いつか理性の糸が切れたら、その時一番幸せそうな人を不幸のどん底に落としに行くのだろうか。

デブは自業自得だという。
自分を守るためだけにデブであることを選ばざるを得なかった場合は、じゃあどうしたら良いのだろうか。

もう分からない。死んでしまいたい。
数少ない私を慕ってくれる友人だけが、私を繋ぎとめている。

消極的デブの仕事は、ただただ苦しみ続けることなんだろう。