デブの視界

巨女のうち一人の供述

私はデブです

幼稚園の頃からぶくぶくと醜く太りだし、それからずっとデブの道をひた走ってきた。

 

それまでは普通体型だったにもかかわらず、増えていく体重を止めようとは思わなかった。

道行く人も家族も親戚もクラスメイトも気弱ないじめられっこも、デブには遠慮無く罵倒してくる。

心療内科の医者ですら、よくそんなに太って平気でいられるねと罵ってくる。

 

私は言い返しもせず、殴りもせず、ただひたすらに傷つき耐えていた。

デブが自己管理すらできないゴミ未満の存在であると十分に理解していたからだ。

デブがデブであるということに触れない、心優しい人達の存在すら負担になった。

心の中でどれだけ私をデブのくせにと見下しているか分かったものではない。

勝手な傷は無数に増えていき、やがてかさぶたのないところなど一箇所もなくなってしまった。

 

高校の時は2桁だった体重が、社会人になり、あっという間に3桁を突破した。

店に置いてある一番大きいサイズのスーツすら着る事ができない。

必然的に通販へ逃げ込み、頼むのは4L、5Lサイズ。

自分の体型が異常であることがどんどん当たり前になっていた。

 

ある日、本屋で老人とすれ違いざまに、ブタが、と罵られた。

眼前が真っ赤になった。

 

帰宅した後、思い切り泣いた。

泣きすぎてただでさえアンパンのように膨らんだ醜悪な顔がより醜く腫れ上がった。

 

このままだとストレスで死んでしまう。

人間は悪意しか持っていない。

相手にデブという欠点があれば人は容赦なく刺してくる。

デブは人間のヒエラルキーの最低辺に存在している。

 

意を決し、ようやく私はダイエットに手を出した。

よく聞く食べたものを全て記録するというやつだ。

 

なんと私は半年ほどかけて20kgの減量に成功する。

生まれて初めて健康診断で褒められたのが嬉しかった。

 

 

しかし、帰省と同時に、全く痩せたいと思わなくなってしまった。

 

 

また元の暴飲暴食が始まった。

気づいたらせっかく減らした20kgも元に戻っていた。

あんなに順調だったのに。

豚はぶくぶくと肥え太り、ついには元の体重を超えてしまった。

 

何故私は痩せられないのか。

幾つか理由は思い当たるのだが、この際全て文章にしようと思った。

 

・親戚からの性的虐待

・父からの性的虐待の記憶

・DVを受ける母

・マザコンの祖父と曾祖母に虐げられる祖母の愚痴

・父による日常的な女性への性的発言

・可愛い服を着ると親からからかわれる

・他人からの性的暴行、脅迫

・強姦描写のある作品、エロ本、エロビデオが昔からそこらに転がっていた

・幼い頃に見た出産映像

 

 

 

痩せる努力の前に、これら全て吐き出す必要があるように思う。

ずっと無理やり考えないようにしていたことばかりだ。

 

対人恐怖症の私は、セラピーなど恐ろしくて通えない。

一人で勝手に吐き出して、冷静になるしかない。

 

数少ない友人の信頼を裏切らないために。