デブの視界

巨女のうち一人の供述

異性が怖い

私は物心つかない頃、父方の実家で、従兄弟達から裸になれと言われた。
腕っ節では到底叶わず、何かおかしいとは思ったが、従うしかなかった。

色々な所をべたべたと触られた。
最初は何をされているのか何も分からなかった。
ただただ従兄弟どもの興味が失せるのをじっと待っていた。

幸い処女喪失することなく、従兄弟達は部屋を出て行った。
その後、親戚のおじさんが様子を見に来た。

彼は何を思ったろうか。
自分の息子たちが出て行った後の部屋に取り残された、年端もいかない女の子が裸にされて呆然と横たわっているのを見て。

彼は私を無視した。
なかったことにした。

その時は見捨てられたということも気づけなかった。
多分自分を守るのに必死だったのだ。


後になってとても嫌なことをされたのだと理解した私は、父方の実家からの電話を一切取らなくなった。
とにかく腹の底で毛虫が這いずりのたうちまわるような嫌悪感があった。

親には言えなかった。
従兄弟どもの欲望のままにいじられた私は汚いもののように思えた。

あれから私はずっと男が怖い。
怖いし、憎んでいる。

奴らは今、のうのうと幸せに暮らしている。
親戚の集まりでも、平然と私と顔を合わせている。

私の体格は奴らに異常を訴え続けている。
お前らのせいで、私は男に性的な視線で見られることに耐えられない。
お前らのせいで、着飾ることに恐怖すら覚えるようになった。

奴らは物言わぬ私が何を考えているか、気づくだろうか。
それとも、もう忘れているのだろうか。
ゴミ捨て場にあった雨ざらしのエロ本をめくった時と同列の、幼く淫らな思い出になっているのだろうか。

私はいつも、奴らをどうやってぶち壊してやろうかと、舌なめずりを堪えながら眺めている。

ヒエラルキーの最下層であるデブに怖いものはない。
社会的地位などないに等しいからだ。

お前らが忘れても、私は死ぬまで覚えている。
いつか絶対に、全部ぶち壊してやる。